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ART TRACE 企画 シンポジウム

ゲルハルト・リヒター:トラウマとしての絵画

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ゲルハルト・リヒター展(東京国立近代美術館)(撮影:木奥惠三)



「現在、東京国立美術館と豊田市美術館を巡回する「ゲルハルト・リヒター展」が行われている。2014年に発表された大作《ビルケナウ》を核に、60年に渡る仕事を回顧できる展覧会となっている。彼の画業は、写真以後の絵画、レディメイド以後の絵画、抽象以後の絵画、近代以後の絵画といった近代のさまざまな美術史観と交差しながら常に現代的なものとしてあり続けてきた。同時にその制作活動は彼が経てきた、ナチ政権下のドイツ、共産主義下の東ドイツ、資本主義下の西ドイツといったさまざまな政治体制と交差してきた。そして現在、彼の画業の集大成とも言える《ビルケナウ》 が、東西統一ドイツの国会議事堂としてリニューアルされたライヒスタークのエントランスホールに掲げられている。そうした彼の仕事を振り返ることは近現代の美術と政治が入り組みながら歩んできた歴史の総合的な反省を促すことにもなるだろう。
《ビルケナウ》は、近代の政治史において表象不可能なトラウマともなっているアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所でのホロコーストを、近代の抽象美術の方法によって表象するという困難な課題に取り組んでいる。ホロコーストがトラウマである限り、そこにどのような知覚可能なイメージをあたえたとしてもそれは、ホロコーストの真実を捏造し、隠蔽することに終わるだろう。そもそも、主観的な解釈を排除しがたい絵画は、客観的な事実を表象する役割をとうの昔に終えてしまっている。写真によるイメージを塗りつぶし、削り取る作業から現れた抽象イメージの中に私たちが見るものはなんだろうか?それは「ビルケナウ」という対象ではなく、対象を知覚することへの隔たりそのものと言えるかもしれない。晩年のリヒターが到達したこの地点は、新しい絵画の可能性を示しているのだろうか、あるいは、ロマン派的アイロニーと崇高の美学への回帰なのだろうか。
今回の座談会では、東京国立美術館の桝田倫広氏と豊田市美術館の鈴木俊晴氏、そして美術批評家の沢山遼氏をお迎えし、「ゲルハルト・リヒター展」が提起している問題を出発点として、その作品についてさまざまな観点から批評的に検証してみたい。

松井勝正 



パネリスト
桝田倫広、鈴木俊晴、沢山遼、松井勝正、松浦寿夫



日時:2022年9月25日(日) 15:00~18:00
参加費:800円


本イベントは、オンライン配信(Zoom)の同時視聴でのみ、ご参加いただけます。
参加をご希望の方は、こちらからチケットをご購入ください。

お申し込み時登録いただいたアドレスに、開催前日の9/24(土)の夜、info@arttrace.org からZoomのリンクをお送りいたします。
※チケットの発送はございません。
※遅くとも開催当日正午(9/25 12:00)までにご購入を完了していただくようお願いいたします。
※コンビニ決済・銀行振込のお客様は前日までに支払いを完了していただくようお願いいたします。
お問い合わせ、ご質問につきましては info@arttrace.org にて承ります。
※アーカイブ配信は行いません。





パネリストプロフィール

桝田倫広(ますだ ともひろ)

東京国立近代美術館 主任研究員。担当した主な展覧会に「ゲルハルト・リヒ ター展」(2022)、「ピーター・ドイグ展」(2020)、「アジアにめざめたら: アートが変わる、世界が変わる 1960–1990年代」(共同キュレーション、東京国 立近代美術館、韓国国立現代美術館、ナショナル・ギャラリー・シンガポール、 2018–2019)、「No Museum, No Life?―これからの美術館事典 国立美術館コレク ションによる展覧会」(共同キュレーション、2015)、「高松次郎ミステリー ズ」(共同キュレーション、2014–2015)など。

鈴木俊晴(すずき としはる)

1982年生まれ。豊田市美術館学芸員。名古屋造形大学非常勤講師。近現代美術史。勤務館での近年の企画に「奈良美智 for better or worse」(2017年)、「コレクション展 光について/光をともして」(2020年)、「ボイス+パレルモ」(2021-22年、埼玉県立近代美術館、国立国際美術館との共同企画)など。共著の『スポーツ/アート』(森話社、2020年)にはゲルハルト・リヒターとブリンキー・パレルモについて書いています。

沢山遼(さわやま りょう)

1982年生まれ。美術批評。著作に『絵画の力学』(書肆侃侃房、2020年)。主な共著に『現代アート10講』(田中正之編著、武蔵野美術大学出版局、2017)など。

松井 勝正(まつい かつまさ)

1971年生まれ。芸術学。武蔵野美術大学、東京造形大学非常勤講師。 ロバート・スミッソンにかかわる仕事として、論文「《エナンチオモルフィック・チェンバーズ》の立体化」『美史研ジャーナル』2(武蔵野美術大学美学美術史研究室、2015)、共著に『西洋近代の都市と芸術7ニューヨーク』(竹林舎、2017)、『現代アート10 講』(武蔵野美術大学出版局、2017)など。著述以外の活動として「宮城でのアース・プロジェクト:Robert Smithson without Robert Smithson」展(風ノ沢ミュージアム、2015年)など。

松浦 寿夫(まつうら ひさお)

1954年生まれ。画家、批評家。多摩美術大学絵画科客員教授。近代芸術の歴史/理論。