*

東京外国語大学総合文化研究所 ART TRACE 共催企画

壁と歌――ミクロ・メディアの政治学

 



 「アラブの春」の出現に際してツイッター、SNS等の情報メディアがもたらした伝達回路の作用が大きく強調されたし、また、日本の場合でも、毎週末の首相官邸包囲の示威活動に際してこれらのメディアの活用はきわめて有効な武器として機能していることは事実だ。とはいえ、これらの最新のメディアへの一元的な依存は、それらが自然災害によって、あるいは権力の強圧的な介入によって、いつでも、どこでも、寸断されかねない伝達形式である以上、複数の回路を抵抗の戦線として構築する必要は急務であるとはいえないだろうか。そして、無数の私が「私は、いま、ここにいる」という言語遂行的な命題を具体的に実践することこそが現実的な作用力を行使しえるのだとすれば、無数の私の「いま」と「ここ」というシフターによって提示される場に直接的に構築可能なメディアとして、ごく端的に我々は自らの声と手の作用力によって、歌、あるいは壁への表記という介入の形式を備えている。実際、「アラブの春」においてもポップスの作用力は決して無視しえるものではなかったし、パレスティナの分離壁へのバンクシーの介入を想起することもできるだろう。
 もちろん、壁や歌が無垢なメディアというわけではなく、歌も壁への表記も、小さな崇高の徴として政治的作用力との安易なまた同時に強固な融合現象の産出媒体として機能しかねない現実を無視することはできないだろう。だが、それゆえにこそ、これらの媒体の作用力の政治的次元もまた当然のことながら精緻に分析される必要があるといえるだろう。
 そこで、グローバルな情報伝達形式とは別の、もうひとつの伝達形式、いわば、無数の私の現場、in situで創設され、連鎖可能な小さく、ローカルなメディアの諸形式を改めて検討する機会を持ちたいと思う。


 松浦寿夫
 「導入―同時遍在性の魔」

 山本薫
 「革命のカウンター・カルチャー:若者文化から見た“アラブの春”」

 南後由和
 「グラフィティ――壁というメディアの転用」

 大山エンリコイサム
 「ウォールズ・イン・モーション――HOBOからグラフィティ、SNSまで」



日時: 2012年7月21日(土) 14:00〜17:30 (開場:13:30)
会場: 東京外国語大学アゴラ・グローバル1階プロメテウス・ホール 【access

入場無料

※事前予約は不要です。参加ご希望の方は当日ご来場ください。