ART TRACE 連続講義企画 全5回(予定)
「芸術の自律性」について、今、考える——その言説の一系譜学

私たちは今、「芸術」という営みを、社会的有用性の観点からばかり価値づける方向に、とめどなく導かれている。芸術がもたらす価値の説明を要求する助成金の申請書やアーティスト・ステートメントなどの常態化を通じて、そうした傾向はますます自然化されている。
芸術をめぐる言説の生態系が、このように絶えず現在的な価値への還元を迫る息苦しいものになりつつある今、わけのわからないもの、言語化できない予感のせり上がり、遅れて到来するものに対する感受性の震えは、無意味なものとして切り捨てられつつある。
この連続講義を通じた「芸術(あるいは感性的判断)の自律性」についての再考の試みは、そうした時間のズレやタメをもたらす感受性の空間や速度をめぐる思考の系譜学の試みである。芸術について「自律性」というと、誰もがいわゆる「モダニズム」美学を想起するだろう。実際、両者には密接な関係がある。だが一方で、「自律性」や「モダニズム」が意味するものは、一様ではなく、両者の関係も捻れや亀裂を孕んで複雑だ。そうした捻れや亀裂の背後に眠る未知の美学的鉱脈に切り込むことを目指しつつ、グリーンバーグ、アドルノ、バルト、フリード、カヴェル、レヴィナス(そしてホワイトヘッド?)といった論者の思考の跡を、数珠つなぎに辿っていこうと思う。基本的に、毎回一人ないし二人の論者に焦点を合わせながら、それぞれの問題を引き継ぐような形で次の回へと移行していくように展開してみたい。
1)グリーンバーグ(の限界と可能性)を読み直す——ミドルブローの憂鬱
クレメント・グリーンバーグの主張とその変遷を、第二次大戦前から戦後に至る歴史的文脈との関係を見定めながら、これまでにない角度から掘り下げて考えてみたい。発表年代の異なるいくつかの鍵テクストに光を当てつつ、ウンベルト・エーコ、ボリス・グロイス、岡本太郎の主張との比較考察などを通して、グリーンバーグの考えていた「モダニズム」あるいは「前衛」といった概念が持っていた可能性と限界、あるいは内的矛盾を、改めて浮き彫りにしてみたい。そうした作業を通じ、同時期に異なる観点から「モダニズム」についてより精緻な思考を展開していたアドルノの芸術理論について考察する土台を整えたい。
講師
林道郎(はやし・みちお)
美術史家、美術批評家。
日時:2026年10月31日(土) 19:30~21:30
会場:アートトレイスギャラリー >> アクセス
第1回 参加費:1,500円
※会場でのご参加もオンラインでの視聴でも、参加費は同額となります。
※会場参加の方、オンライン参加の方いずれも、イベント終了後、当日の配信動画をご視聴いただけます。
配信映像は、終了後約2週間の公開を予定しています。
※オンライン参加の方には、視聴用リンクのURLを開催日までにお送りします。
※会場参加の方には、イベント終了後に視聴用リンクのURLをお送りします。
定員:50名(会場での参加)
参加をご希望の方は、こちらのオンラインショップから各種チケットをご購入ください。
お問い合わせ、ご質問につきましては info@arttrace.org にて承ります。
